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テレビ番組などでも話題になった「シェアハウス」や突然の雨でも傘をシェアすることができる「シブカサ」など、最近は「シェア」という言葉をよく聞くようになりました。
個人で所有するのではなく、みんなで共有するというスタイルが広く受け入れられる時代になっているようです。そんな中、みんなで車をシェアする「カーシェアリング」というサービスが今、注目されています。
「若者のクルマ離れ」が言われる中で広がっているカーシェアリングとはどんなものなのか、レンタカーとの違いやメリット・デメリットなど、知っておきたい基礎知識をご紹介していきます。
カーシェアリングとは
カーシェアリングとは、車を個人で所有するのではなく複数の人で共同利用するシステムのことです。共同利用するといっても、管理はサービス会社が行うので、利用者は会員登録をしておくだけで、車が必要なときにだけ利用することになります。
シェアする車はカーステーションと呼ばれる無人の駐車場に置かれています。ステーションは時間貸駐車場やマンション、コンビニなどの駐車場の一画に設置されていて、同じカーシェアリング会社であればどのステーションからでも乗ることができます。
ただし、返すときは元のステーションに戻す必要があります。
レンタカーとの違い
管理する必要もなく使いたいときにだけ使えるのならレンタカーとは何が違うのか、と思いますよね。レンタカーとの大きな違いは、「会員登録をすれば面倒な手続きなしで24時間いつでも利用できる」「15分や30分という短い単位で利用できる」という点です。
レンタカーの場合は借りるごとに契約の手続きをする必要がありますが、カーシェアリングではネットで予約すれば、あとは無人のステーションにある車に乗り込むだけ。返すときもガソリンを満タンにしておく必要はありません。
このような違いから、カーシェアリングはレンタカーより日常的なものといえます。たとえば、荷物が多くなりそうな買い物や子供の塾や習い事の送り迎えなど、わざわざレンタカーを借りることでもないようなとき、気軽に使えるのがカーシェアリングなのです。
都市部向きのカーシェアリング
公共交通機関があまりなく移動に車を使わざるを得ない、いわゆる「クルマ社会」の地域では、それぞれの家庭にマイカーを持っているほうが便利だと思いますが、都市部では電車やバスでそれほど不便がなく移動ができてしまいます。
そうなると、保険代や車検代、駐車場代など高い維持費を払ってまでマイカーを持つよりも、必要なときにだけカーシェアリングを利用することは経済的にも合理的です。また、なるべく公共交通機関を使うことになるので、環境の面でもエコだといえます。
カーシェアリングのデメリット
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ここまではカーシェアリングの良い部分ばかり書いてきましたが、もちろんそうでない部分もあります。
車の台数が少ない
ステーションごとに置いている車の台数が少ないので、ほかの人が使っていた場合は利用できなかったり、車種が少ないため好みの車を選べないということがあります。急用で使いたいのに誰かが使っている、大きな荷物を載せたいのに小型車しかないなど、イレギュラーなときの利用には注意が必要です。
ステーションが近くにないと不便
ステーションが近くにない場合、往復に時間がかかり気軽に使えません。気軽さが売りのカーシェアリングなので、身近にあってこそ価値があります。
乗り捨てはできない
使ったら元のステーションに戻さなくてはいけないので、片道だけ使うことはできません。会社によっては一部の地域だけで乗り捨てができるサービスもあるようですが、基本的には元の場所に戻す必要があります。
借りなくても基本料がかかる
その月に一度も車を借りなかったとしても、月額の基本料は払わなくてはいけません。ただ、会社によっては月額基本料が0円のプランなどもあるので、あまり利用しない方はそのプランにしてみるといいでしょう。
時間を過ぎると料金が倍に
あらかじめ決めた時間をオーバーするとと料金が倍になってしまいます。時間の延長は可能ですが、もし、すぐあとに別の人の予約が入っていた場合は延長ができないので、余裕を持って返す必要があります。無駄な寄り道や急な用事に対応しにくいのもデメリットです。
ただ、予約した時間より早く戻っても料金は利用した時間分だけなので、長めに予約をしておけば困ることも少なくなります。
料金体系
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カーシェアリングの料金体系は基本的に「初期費用(入会金と会員カードの発行料)+月額基本料(保険料やガソリン代など)+利用料(時間料金と距離料金)」となっています。初期費用を払ってしまえば、毎月払うのは基本料と利用料だけで、ガソリン代も備え付けのカードで支払うため自己負担する必要はありません。
ほかにも6時間や12時間などの固定パックやナイトパックのプランや、会社によっては1度の利用料が高くなる代わりに月額基本料がなしという無料会員制度などもあるようです。
利用の流れ
STEP1:入会する
利用するにはまず会員登録する必要があります。会員登録してからICカードが届くまでは1週間から10日ほどかかるので、カーシェアリングを利用しようと考えている場合は、余裕を持って会員登録しておきましょう。
STEP2:予約する
ICカードが届いたら予約をします。予約はパソコンや携帯電話などインターネットからもできますし、電話での予約もできます。
STEP3:解錠する
予約をしたらその時間にステーションへ行き、ICカードを使って鍵を開けます。車にはICカードの読み取り機が付いています。車内のグローブボックス(助手席の前の小物入れ)に鍵が入っているので、その鍵で使ってエンジンをかけます。
STEP4:施錠する
使い終わったら車をステーションの元の位置に戻し、鍵も元の場所に戻します。車から降り、ICカードで施錠したら返却完了です。
STEP5:返却完了
返却の際は次の利用者のためにもゴミなどは残さず、綺麗な状態にしておきましょう。
各カーシェアリング会社の特徴
カーシェアリングがどんなものかわかってきたと思うので、ここからは代表的なカーシェアリング会社の特徴をご紹介していきます。
タイムズカープラス(Times Car PLUS)
カーシェアリングの最大手。時間貸駐車場の「タイムズ24」が運営しているので、時間貸駐車場の一画にステーションを置くことで、ステーション数・設置車数ともに規模が大きいようです。また、タイムズ24の会員特典も利用でき、使うごとにポイントも貯まります。
最近は車種もどんどん増やしていて、BMWやAudiなどの外車が設置されているステーションも。ほかにも、WEBで会員登録してから店舗に行くと当日のうちにICカードを受け取れる「即日入会」のサービスもあります。
オリックスカーシェア
レンタカー事業も手掛けるオリックス自動車が関東、関西、東海を中心に全国で展開しています。リーフなどEV(電気自動車)も積極的に採用したり、自治体のEVカーシェアリング事業にも協力しています。
また、2009年からはファミリーマートと業務提携しファミリーマートの駐車場の一画をステーションにするなど、使い勝手の良さが魅力。ほかにも、学生プランや法人プランを月額基本料無料にするなど、さまざまな料金サービスが用意されています。
careco(カレコ・カーシェアリング・クラブ)
三井物産グループが提供するカーシェアリングサービスです。東京23区内を中心に首都圏に特化した展開が特徴で、首都圏だけであればタイムズカープラスにも劣りません。また、車種のバリエーションも多彩です。
カードだけでなくケータイやスマホでドアの開・施錠ができるので、予約からすべてスマホだけでOK。ほかにも、平日が安かったり6時間以内なら距離料金が無料など、独自のサービスも豊富にあります。
アースカー
アースカーはフランチャイズ展開をしている珍しいカーシェアリングサービスです。車も各オーナーさんが好みで選んでいるので多種多様。また、都市部だけでなく郊外にも点在しているのが特徴です。
料金が細かく設定されていて、車種だけで10段階、さらに同じ車種でも年数を経るごとに安くなっていきます。また、月額基本料が無料なので利用した分だけしか料金が発生しません。ほかにも、長時間利用で割引になるので遠出にも使えます。
カリテコ
名鉄協商が運営しているカリテコは、名古屋を中心に愛知と岐阜で展開しています。名鉄の子会社である名鉄協商は駐車場の運営もしていて、なんとカリテコ利用中は約700ヶ所ある名鉄協商の駐車場が無料で利用可能に。駐車場は駅周辺に多いので「最寄り駅から電車で来て、車に乗り換えて目的地へ」という使い方が便利です。
名鉄のICカード「manaca」を会員カードとして登録できるので、持っていればカード発行手数料もかかりません。愛知や岐阜にお住みの方はとても利用しやすくなっています。
カーシェアリング会社の選び方
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5つのカーシェアリング会社をご紹介しましたが、それぞれに良さがあって迷ってしまいますよね。そういう場合は3つのことを意識しましょう。
1.自宅・職場から近いステーションのある会社
カーシェアリングの良さはやはり気軽さに利用できることなので、ステーションまで行くのに気が重くなっては意味がありません。どれだけ料金が安くても何kmも離れていては使う気がしないですよね。目安としては500m以内。500mの範囲に何社かある場合に初めて、料金やサービスを比べてみましょう。
2.自分に合った料金プランのある会社
会社の紹介でも書いたように、各社はさまざまな料金プランを用意しています。なので、プランによってはとても安く利用できたりするのです。
まずは1ヶ月にどのくらいの頻度で、どのくらいの時間、どのくらいの距離利用するつもりなのか考えてみましょう。利用回数の少ない場合は月額基本料が無料のプランを、回数の多い場合は基本料が高くても利用料が安いプランがいいかもしれません。
3.好みの車種のある会社
せっかく車に乗るのですから、自分の気に入った車に乗りたいですよね。車種は会社によっても違うし、ステーションごとにも違っています。最寄りのステーションにはどの車種が置いてあるのかも調べたうえで、好みの車種がある会社を選びましょう。
そのほかのチェックポイント
上の3つ以外にも注意しておくポイントがいくつかあります。まずは車載装備。カーナビやETCは基本的に付いていますが、チャイルドシートはオプションにないことも。小さなお子さんのいる方はチャイルドシートが借りられるかも確認しておきましょう。
また、各社とも頻繁にキャンペーンが行われています。キャンペーンでは一定期間の基本料金が無料になったり、入会時の各種手数料が無料になるなど、かなりお得に入会できます。説明会や体験会に行くと安く入会できることもあるので、時間がある場合は参加してみては。
また、カーシェアリング比較サイト限定のキャンペーンもあるので、各社の比較の参考にするとともにキャンペーンを利用するためにも、一度チェックしてみるといいでしょう。
利用するにあたっての注意点
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最後にカーシェアリングを利用するにあたっての注意点を書いておきます。
乗っていない時間も料金はかかる
利用料は時間料金+距離料金なので、乗っていない時間も時間料金は発生します。なので、何かの用事で行き帰りにカーシェアリングを利用するとき、用事の時間が長ければ長いほど損になってしまいます。
ペットの乗車・喫煙は不可
犬や猫のアレルギーなどもあるのでペットを乗せることはできません。かつてはゲージに入れていればOKの会社もありましたが、現在は全面禁止されています。また、車内での喫煙も禁止です。
忘れ物をすると大変
車のなかに忘れ物をしてしまった場合、一度返却してしまっていると鍵が締まってしまい、なかに入ることはできません。その場合、サービス会社に電話をする必要がありますが、もし携帯電話やスマートフォンを忘れてしまうとそれもできずに非常に困ってしまいます。
次の人に迷惑をかけない
利用するごとに掃除業者が入ったりということはないので、基本的に自分が使った状態のまま次の利用者が使うことになります。ゴミを置いたまま降りたら、次の人が乗るときもゴミはそのままになっているのです。ゴミが出たら必ず持ち帰りましょう。
カーシェアリングはあくまで車をほかの人と共有することです。自分が使い終わったからもういいや、と思わずに、「車内を綺麗に使う」「時間に遅れない」など次に乗る人を意識して利用することが大事です。
シェアをして生活を豊かに
まだまだ普及しているとは言いがたいカーシェアリングサービスですが、近年急激に成長していて、2014年の市場規模は前年比45.3%増の154億円だったそうです。カーシェアリングは構造的に、利用者が増えれば車やステーションの数が増え、さらに利用しやすくなって利用者も増えるという好循環になりやすいので、今後ますます広がっていくと思われます。
現在は首都圏に集中していますが、今後全国に広がっていくと旅行や出張でも効率的に活用できます。場面や用途に合わせてカーシェアリングとレンタカーと公共交通機関を使い分けていけば、環境にもお財布にも優しい生活を実現できるのではないでしょうか。
(image by PresenPic 12345)